足に合った靴さえあれば

昨日の夜、通勤用にバッグに入れていた小林信彦『1960年代日記』を、ベッドの中でも読もうとかばんから取り出したまま、今朝、出勤してしまう。あ、と思ったときはもう遅い。仕方ないので朝の電車は車内吊り広告を普段の5倍以上に熟読し(男が選ぶ映画というような特集をしている雑誌にちょっと興味。でも雑誌の名前を忘れた)、隣の人が広げる日経新聞をちら読みしてやり過ごす。帰りはもちろん電車に乗る前に本屋に行った。

須賀敦子全集〈第3巻〉 (河出文庫)須賀敦子全集 第3巻』(河出文庫)は、文庫で須賀敦子全集が刊行され始めてからずっと待っていた1冊。解説は堀江敏幸。私の初めての須賀敦子である『地図のない道』が収録されている。そして『ユルスナールの靴』も。「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ」というのは『ユルスナールの靴』のおなじみの冒頭だけれども、中学生ぐらいから足がどんどん大きくなり窮屈な靴を無理して履いていたために、足の指の形があまり人にお見せできないようになった私には何度読んでも実感がこもる。もちろん今は今後の行く先にも悩んでいるのでそういう意味でも。

一度読んでいるので、まあ帰りの時間つぶしになればいいかなあ程度の気軽な気持ちでページをめくったのに、あっというまに須賀敦子ワールドに引き込まれた。『地図のない道』で、須賀さんはヴェネチアの細い道をひらりひらりと歩くルチアを道案内にしているけど、須賀さんのしっかりした足取りの文章が私を道案内してくれればと思う。でも、あまりのよたよたぶりにお尻をたたかれてしまいそうだ。

それにしても表紙のルイジ・ギッリの写真はいい。「モランディのアトリエ」の写真集、日本語版が出ればいいのに。

帰宅後、『ちりとてちん』の再放送を見ているあいだに浦和レッズが1点を先行。後半にも1点追加でそのまま優勝。すごい。