目ざめて本棚をみると

レトロ風に撮影・・・

『もののはずみ』や『彼女のいる背表紙』で、堀江敏幸は写真も撮るのだなあ、と思っていたけど、まさか写真集を出したとは思わなくて、しかもBEAMSプロデュースで、本屋さんで見つけたときは、買おうかどうしようか少しためらったのだったけど、やっぱりファンなので買うことにする。隣に並べられていた片岡義男の写真集と同じコンセプトとは思えないほど、堀江カラーがくっきりの造本。『目ざめて腕時計をみると』というタイトルも含めて、あまりにもらしくて、ちょっと気恥ずかしくなるくらいだわ。
あちこちの書評で目についたアントニオ・タブッキ『時は老いをいそぐ』が読みたかったので、その後、外国文学の棚にいそいそと移動したら、帯にはなんと堀江敏幸の惹句が。私の人生、どんだけ堀江に影響を受けているんだ。先日以来の堀江祭りがまだ引き続いております。

金井美恵子の『ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ』(新潮社)を読んでいるあいだは本当に楽しかった。ここまで、うっとりできる読書は久しぶりだった。よかったなあ。その直後に読んだ岡田茉莉子の『女優 岡田茉莉子』(文春文庫)がこれまた本当に素晴らしかった。『映画長話』(リトルモア)のなかで、青山真治蓮實重彦が「もう途中から泣いてしまって・・・」「わたくしもいろんなところで鼻の奥がつーんと痛くなって」と感動にむせんでいるけど、岡田茉莉子にそれほど詳しくない私でも、ちょっと涙。そして、彼女の素晴らしい記憶力に完全にやられました。すごい。