自分の地図をもう一枚

三連休だけど何の予定もない。だんなさんは3日間とも仕事だし、今月は月初と月末に予定が重なって目白押しになっているので、この三連休はのんびりしようと決めたのだ。行動範囲はせいぜい隣の駅まで(大きな本屋さんがあるから)と勝手に制限して、家の近所をぶらぶら、家の中をごろごろする・・・つもりだった、金曜日までは。しかし金曜日に『ku:nel』(パリ特集)と『旅』(別冊付録の松本清張・旅ブックが目当てだった)を買い、土曜日に平松洋子さんの『焼き餃子と名画座 わたしの東京 味歩き』を読んだら、なんだかお散歩熱がむくむくと湧きあがってきたのだった。とりあえず地元をもう少し開拓しようかという気になり雨交じりの寒い日曜日にマフラーをぐるぐるまきにして、いざ出発。気になっていたオーガニックごはん屋さんでランチのあとは、地元では老舗の喫茶店に入ってコーヒーとケーキでのんびり。ついでにいきつけの自家焙煎豆店にも寄ってマンデリンを買い、普段あまり通らない商店街にも足をのばし、そういえば少し離れたところにあるスーパー銭湯には行ったことあるのに、ここの銭湯にはまだ入ったことないなあ、などと思いながら駅に向かってぶらぶら、うろうろ。だんだん寒くなってきたし、そろそろ家に帰ろうか、と、いつものスーパーで夕食に足りない野菜を買い出したあと歩いて家に戻る途中で、今度は骨董屋さんに引っかかる。ちょうどキリム展の真っ最中で、なんの気なしに手に取った焦げ茶の小さなキリムに一目ぼれ。今年のボーナスはほとんど出ないんだけどどうしよう、と思いつつも、えいっと買ってしまう。思いもよらない出費に興奮して、今日のお散歩記念なんだから、と勝手に盛り上がり、ついでに酒屋も寄ってブルゴーニュを一本。これは少し先の楽しみにとっておこうと思う。
焼き餃子と名画座 わたしの東京 味歩き

みなそれぞれに自分の町の地図を持っている。歩いたぶん、暮したぶんの歳月が降り積もってできあがった地図。(中略)ひとりひとりの地図は微妙にずれたり重なったり、そしてあたらしい書き込みを増やしたり消したりして書き換えられながら、自分だけの一枚が胸のなかにたたみこまれる。
平松洋子『焼き餃子と名画座 わたしの東京 味歩き』(アスペクト)P.10

この連休で、私もちょっとだけ自分の地図に書き込みを増やした。炒りたての豆で入れたコーヒーを飲みつつ、次はどこを書き換えていこうかと思案する。