やんごとなき読書

本物

「今、それがなくなると、がっくりして一番困る物は、四十年来つかっているすす竹の耳かき」(金井美恵子「昔のミセス」幻戯書房p.220)という文章を読んだときには、そんなもんかなあと思っていたけど、つい最近、自分も二十年来使っていた”すす竹”ではない普通の竹の耳かきの、耳をかく部分のところをぽっきりと折ってしまったら、やっぱりしみじみと困ってしまっているのだった。似たようなのがあればいいなあと思って近所のホームセンターに行ってもなんかぴんと来なくて買わずに帰り、そうそう、ときどき駅の構内で爪切りとかザルとか売っているときがあるから、そこで見つければいいやと思っているけど、そういう時に限ってよろず屋は出店してくれていないんだよねえ。がっくり。今週はどこかで見つかるといいけどなあ。

関川夏央汽車旅放浪記』が文庫になっていたので購入して読んだ(2回目)。前回はハードカバーを買わずに図書館で借りて済ました。文庫の表紙が、いいなと思っていたハードカバーと同じでうれしい。サハリン鉄道のところが、やっぱりぐっと来てしまう。

金曜日から体調が悪くて土日はほとんどこもりっぱなし。朝、だんなさんを送り出してから、そのままベットに逆戻りして眠ったり起きたり。英語の勉強用にと買っておいたAlan Bennett『The Uncommon Reader』を辞書を片手にちびちび読む。面白い。読書に夢中になり、移動中も馬車の窓から群衆に向かって手を振りつつ、視線は膝の上の本においたままという女王が意外と可愛いく思える。(私の中ではエリザベス女王は本人よりもヘレン・ミレン)