野武士はもうおらん

日経新聞「フィルムに描く」

暑いので出かける気にならない。ケーブルTVで黒澤明監督『七人の侍』をやっていたのでついつい観てしまう。ここのところ日経新聞の日曜美術面で黒澤明監督が特集されている。『天国と地獄』で、身代金受け渡しの場面に映る民家の屋根が邪魔だからといって「一日だけ二階を取っ払わせてくれ」と頼み込んで撤去させてしまったのは知ってたけど、『夢』でも絵になる麦畑を撮るために通常の輪作を破ってまで麦を作ってもらうよう農家に頼んだり、道路に色をつけたりと、そこまでするのか、というこだわりぶりを読んでいるうちに、また黒澤映画を観直したくなったのだ。

七人の侍』の撮影については、廣澤榮『日本映画の時代』(岩波書店・同時代ライブラリー)にも詳しく書かれていて、まず衣装は京都で染めさせて300着を新調したはいいけれど、古びた感じを出すためにそれを川で晒したあと泥に埋めて、それを洗って軽石でこする作業を2ヶ月も続けるところからしてすごい。雨の中の決戦シーンは極寒の2月に撮影し、消防車8台分の猛烈な人工雨を降らせていたら、途中から本物のみぞれまで降ってきたらしい。「どろどろの泥だらけになってすごいなあ」と観ているほうも感心するほどに、役者もスタッフもずぶぬれで泥だらけでたいへんな撮影だったことがわかる。

先日『天国と地獄』『生きる』がテレビドラマでリメークされていたので、ちょっと楽しみに観たんだけど、両方とも気迫のようなものが画面から伝わってこなくてがっかりした。演じた俳優は好みの人が多かったんだけど、撮影する監督スタッフの意気込みというか、作品に対する鬼気迫るほどの情熱のようなものが、差となってでちゃったんだろうなあと思う。

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