振り返れば友がいる

狐狸庵交遊録 (河出文庫)懐かしい人たち (ちくま文庫)やる気の出ない連休明けは楽しい本がいい。ということで遠藤周作『狐狸庵交遊録』(河出文庫)を読む。面白い。ちょっと前に読んだ吉行淳之介の『懐かしい人たち』(ちくま文庫)や、同じく吉行の『定本・酒場の雑談』(集英社文庫)と重なる部分もあって、3冊を見比べながら読むとますます面白い。六本木の酒場で出会った「ニセ伯爵令嬢事件」については、遠藤が吉行の女性あしらいのうまさを、吉行は遠藤が舞台となった酒場のママに惚れられたことをそれぞれ書いていて、お互いを褒め称えているよう。梅崎春生のおせっかいに閉口したり、北杜夫の躁鬱を逆手にとって楽しんだりしている様子もたくさんでてくるんだけど、それでも読んでいるうちに男同士の友情っていいなあって思えてくる。

『狐狸庵交遊録』には「ひと昔まえの文壇には、当人は大真面目だが、横から見ていると何となく滑稽な人や変人や奇人が何人かいた。そういう変人が少しずつ消えていったのが今の文壇のような気がする」(p151)とあって、文壇の人に対する好奇心が薄らいでいく気分もちらりと見える。確かに最近の「文壇交遊録」ってあまりかかれていないような気がするんだけど、こういうものって小説以上にその作家の人となりが透けて見えたりするので書かれなくなるのはもったいないなあと思う。自分のことはブログなどで発信できるのに、友人といえど他人のことは書きづらくなっているということなんだろうか。