Dandelion wine

今年の夏も終わるなあ

朝晩なんとなくひんやりした空気が通るようになったり、空が高くなったり、部屋の奥まで陽が差し込むようになったりすると、夏も終わりかな、と思う。スイカやカキ氷、浴衣やプールに未練たらたらというわけではないし、暑い暑いと文句も多かったけれどそれでも夏の空気が遠ざかっていくのはさびしい。なんだかんだいって、夏は好きなのだ。だからどうしてもレイ・ブラッドベリ『たんぽぽのお酒』(晶文社)は、夏の終わりが近づくと読みたくなる。

たんぽぽのお酒。
この言葉を口にすると舌に夏の味がする。夏をつかまえてびんに詰めたのがこのお酒だ。

6月に仕込んだ梅シロップの壜がそろそろだと思って、床下から取り出してみた。いい具合に漬かったシロップは日に透かすときらきら黄金色で、風味付けに入れたレモンとシナモンスティックでぴりりとしまった大人の味がする。ソーダ水で割ったグラスを片手に『たんぽぽのお酒』を読み始めたら、主人公のダグラスが血管のなかの季節を変えるように、私にも夏の初めの気分が戻ってきたようだった。私なりの「たんぽぽのお酒」。