The Feel of Reading

カラマーゾフ』は長いので、読んでいるうちに入り込めないときがくる。眼だけが文字の表面をすべるように追ってしまって、内容が言葉として頭に入ってこなくなるときがあるので、そういうときは5ページぐらい前のところに栞をはさみ、いったん本を閉じて、気分転換。ほかの本を探したり、テレビを見たり。そういう合間に『ヘンリー・ダーガー非現実の王国で』(作品社)とか、ケストナー『一杯の珈琲から』(創元推理文庫)なんかを読んだりしてたけど、いちばん気分転換になったのは、図書館から借りてきた、青山南(文)・阿部真理子(絵)の『眺めたり触ったり』(早川書房)だった。
眺めたり触ったり

おもしろいんでいっきに読んでしまった、とひとがいうのを聞くたびに、じぶんがいやになる。一冊の本をいっきに読むという経験がないわけでないが、のろのろ読んでいるのがだいたいいつもの僕の読み方だからだ。本の最後のページの数字をみ、いま読んでいるページの数字をみ、ふーッ、と溜め息をついている。残りのページを親指と人差し指でつまんで、その厚みをはかるときの、敗北感のようなもの。親指をはなすと、まだ読んでいないページがぱらぱらとひとりでにめくられていく、それをながめるときの、虚しさのようなもの。ぼくはそのふたつの「ようなもの」のあいだで本を読んでいるみたいだ。

  〜青山南・文、阿部真理子・絵「眺めたり触ったり」(早川書房)〜

そうそうそうなのよ。『カラマーゾフ』を読んでいる途中になんど残りのページを数えたことか。しかし青山さんと同じく、私も途中で本を読むのをやめることができない貧乏性なので、休憩してはまた読んじゃうのだ。

それにしても光文社古典新訳文庫は各巻のしおりが「登場人物紹介」になっていて、覚えにくい名前の登場人物がたくさんいるロシア文学では重宝するし、価格面でも1巻は442ページで760円、4巻は700ページで1080円というのは、チャペックの『チェコスロバキアめぐり』(ちくま文庫)が234ページしかないのに777円もするのに比べてたいへんお得な感じがする。というより、ちくま文庫が高すぎ。筑摩書房は光文社をちょっとは見習ってもいいと思う。