お楽しみは「ぼく」からだ

倫敦巴里も読み直した

引き続き「一箱古本市」で購入した本を読む。今回は和田誠『銀座界隈ドキドキの日々』(文春文庫)。デザイン業界を中心とした60年代の活気がすごい。そして芋づる式の友達の輪がすごい。仕事と遊びと分け隔てなく毎日が楽しさでいっぱいの様子がストレートに伝わってくる。横尾忠則は「横尾ちゃん」、篠山紀信は「シノ」、和田誠は「マコちゃん」と呼び合っているのが友達っぽくっていいなあ。「ガンちゃん」こと細谷巌が出てくるので、『細谷巌のデザインロード69』(白水社)も並行して読み直す。うーん、いっそう面白い。

それにしても『銀座界隈ドキドキの日々』の和田誠の文章は、「ぼく」が頻発するせいだと思うけどほかの著作よりもずっと「少年」ぽい香りがする。村上春樹のような乾いてさらりとした「僕」とは違う、どちらかといえば谷川俊太郎の詩のようなみずみずしくてくすぐったい感じさえする「ぼく」。若いときにそんな自分がいたなんて、ほんと、羨ましいなあ。