あがらない気持ち

ガルシア=マルケスが死んだ。彼の書いたものを読んでいると、いったいどこからどこまでが本当でどこからどこまでが夢語りで、そして時代はいつなのかとか、場所はどこなのかとか、そういう背景といったものがまったく分からなくていつも異世界に放り込まれている気分になるのだけど、それは自伝として書かれた『生きて、語り伝える』(新潮社)を読んでいてもそうだった。2009年に出版されたこの本の解説には、自伝第二巻として、『百年の孤独』を書き上げるまでのいきさつが書かれることが示唆されていたので楽しみに待っていたんだけど、もう、それはないんだろうな。残念です。

安西水丸さんも亡くなられた。ものすごいファンというわけではないんだけど、好きなのは和田誠と共著の『青豆とうふ』。ループタイに理解不能なところに納得したり、寺山修司に三回も謝られたという話にへええと思ったり、どこのページを開いても面白いです。

久しぶりに母に電話をしたら、祖母の痴呆が進んでしまって、とうとうグループホームで過ごすことになったと伝えられた。商家の娘として不自由のない少女時代を過ごし、結婚して子供や孫やひ孫を持ってからも、わがままで可愛いところは相変わらずだったおばあちゃん。先日読んだアリス・マンローの『クマが山を越えてきた』を思い出した。

この土日は寒いなあ。せっかくの新緑なのに。そのせいなのか、こころがなんとなく沈む。

地球を/つま先で まわして/玉乗りしているみたいに/ホッホッと/昨日の私は/陸の緑/海の青を/ツッツッと

だが今日/てっぺんに/私の気持ちはなく/まわしてもまわしても/あがってこない気持ちを/私の姿が待っている/足もとに地球もなく/立っている

「地球儀」〜『木坂涼詩集 ツッツッと』(詩学社)より