記憶の技法

この日記は、(いちおう)読書日記なので、その月に読み終えた本を月末にリストにしておいてあります。月末のリストを作るために、読み終えたら無印で買ったノートに、タイトル、著者名、出版社名をとりあえずメモしておくんだけど、そのメモを見ながら思うのは、たった一ヶ月間の読書なのに、はやくも記憶が曖昧というか遠い昔のようなことになっている本もあるんだなあ、ということ。今月読んだ本の中で、すでに遠い昔のようになっているのは小沼丹の『黒いハンカチ』。まあ、今月の本の中ではもっとも早く読み終えたわけですが、なぜかこれより前の5月に読み終えた『いつも旅のなか』(角田光代)とか、『彼らの流儀』(沢木耕太郎)のほうが生々しい記憶が持続しているのはどういうわけだろう。決して『黒いハンカチ』が楽しくなかったわけではなくて、この日記を書きながらでもこの本のことは結構鮮明に思い出せるんだけど、なんというか、人から聞かれなくてもふわふわと体の周りに漂っているのではなく、そういえばこの本を読んだこともあったんだっけなあ、と、わざわざ記憶の引き出しから探り出すような感じ。不思議です。