COOK BOOK

料理をするのは好きかといわれると、好きではないが嫌いでもない、程度の私だが、料理の本を読むのは結構好き。有元葉子、長尾智子栗原はるみ福田里香、高橋みどり、ケンタロウ、あたりの本は見ても楽しいし、明日からすぐ作れる実用本としていくつかを台所の棚に常備。でもそうじゃなくって、読むのが楽しいだけの料理本も結構ある。『フロイトの料理読本』(青土社)、『赤毛のアンのお菓子絵本』(主婦の友社)、『アリスの国の不思議なお料理』(新潮文庫)とか、伊丹十三が訳した『ポテト・ブック』(ブックマン社)あたりがそのライン。今読んでる『アリス・B・トクラスの料理読本』(集英社)も、台所じゃなくって2階の本棚が定位置に多分なると思う。ガートルード・スタインとアリス・B・トクラスのカップルが、ピカソを食事に招くところのくだりがいい。
アリス・B・トクラスの料理読本 ガートルード・スタインのパリの食卓

いよいよ食卓にだす前に、魚の体一杯にマヨネーズを塗り、それからお菓子用の絞り出し袋に入れた赤マヨネーズで模様を描いた。(この時色づけにはトマトペーストを使うこと。ケチャップを使うなんておそろしや、おそろしや!)それから黄身と白身を別々に裏ごしした茹で卵、トリュフ、細かく刻んだフィーヌゼルブで飾りをつけた。スズキが食卓に運ばれると、わたしは傑作のできに、とても誇らしい気分になった。ピカソも美しさに思わず感嘆の声をあげたぐらいだ。でもそのあとの言葉が憎い。「この料理、どっちかっていうとマチス向きだね。ぼくじゃなくてさ。」(p16)

とことでこの本、訳者による注釈が多すぎて邪魔くさい。トリュフにまで注釈をつけられるとちょっとなあ、という気がする。