雨のなかの散歩

1992年初版13刷

きゅうに寒くなった。悪い天気になった。体も頭も重い。会社を休んでしまう。新聞を読みながら朝の連ドラ『ちりとてちん』を観て、9時に会社に連絡してから、もう一度ベッドにもぐりこむ。お昼まで眠る。

家のなかで一人でいるとなんだかよけいにウツウツとなりそうだったので、ブックオフまで散歩した。途中、線路を跨ぐ橋の上で小学生ぐらいの男の子がお母さんと一緒にじっと電車が来るのを待っていた。ここは貨物列車も通る線路で、ときどき珍しい電車が走るときはカメラを手にした「鉄」ファンの姿がみられる。撮影スポットらしい。今日はなにかな。私もちょっと待ってみたけど、いっこうに来る気配なし。待つのはやめてブックオフへ向かう。

105円の棚から、永井龍男『青梅雨』(新潮文庫)、村上龍コインロッカー・ベイビーズ(上・下)』(講談社文庫)などを買う。『コインロッカー・ベイビーズ』は実家においてあったと思ったのに先日行ったら見当たらなかった。見当たらないと急に読みたくなってくる。『coyote』の新井編集長は、これと村上春樹世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を重ねて読み、さらに『愛と幻想のファシズム』へと進むらしいが、私は『愛と幻想のファシズム』はあまり好きじゃないのでパス。『コインロッカー・ベイビーズ』だけは繰り返し読みたくなる。

尾崎翠全集』(創樹社)も買ってしまう。尾崎翠ちくま日本文学全集で持っていたし1200円という微妙な値段だったので躊躇していたけれど、さすがに1ヶ月以上も棚に残っていると、つい「ひょっとして私しか買う人はいないのかも」という気持ちが働く。思い切って買ってしまうと、ウツウツが少し軽くなってきたような気がした。

帰り道の跨線橋に男の子の姿はなかった。電車はもう、行ってしまったのか。