縁側に腰掛けながら

自家製モヒートを飲みながら

田辺聖子『私的生活』『苺をつぶしながら』を読み終えた。どちらも最後には、すとんと転がされるような面白さ。面白いけどかなりコワイところがある。

 私にとって男と女の関係は尽きぬ興味の源泉である。それも波瀾万丈の運命よりも、日常のただごとのうちに心がわりしてゆく、という、そのあたりのドラマが私の心を惹きつける。
 白い布に一滴の水が落ち、静かにしみがひろがってゆくように、また、夕焼けの色が褪せるように、かわってゆく人の心というものは、なんとふしぎなものだろう。

田辺聖子『私的生活』講談社文庫 あとがきより

まったく同感。本には読みどきがあると思うけど、今回の二冊に限っては今ぐらいの時期でよかったと思う。若すぎるといたずらに不安が増大しそうだし、歳をとりすぎても自分の身辺感覚とは遠いところのお話になってしまうようで、怖さが感じられなくなりそう。自分を振り返ってみても、心がわりしてゆく(はずの)男女が、いつまでも一緒に住んでいるのがまったく不思議だなあ、と、気持ちのいい秋の昼下がりに縁側で腰掛けながら思う。一滴の水が落ちているのに気づかないだけなのか、いつの間にかしみが乾いちゃったのか。それにしても田辺聖子、うまい。エッセイよりも恋愛小説がいいと思う。

夜は近藤史恵サクリファイス』(新潮社)を。自転車ロードレースの展開がかなり面白い。