ケーキ、ケーキ、ケーキ

赤毛のにんじん

大人になって食べ物の好き嫌いは減ったものの、いまだに積極的に食べる気になれないもののひとつが、にんじん。出されたら食べます。筑前煮には入れます。でもきんぴらはごぼうだけのことが多い。しかしそうは言ってもベータカロチンは多少とった方がいいかもしれないと最近思い始め、ここのところにんじんはケーキにして食べている。ケーキは、小学生からの愛読書『赤毛のアンのお菓子絵本』を差し置いて、日本のマーサ・栗原はるみのレシピから(でも二つはすごく似てるのだ)。ここからさらに砂糖をへらし、極力甘さを抑えたので朝ごはんに食べてます。

堀江敏幸『熊の敷石』にはヤンのおばあちゃん直伝のキャロット・ケーキが出てくる。

私がピーラーで皮をむいたニンジンをせっせと数ミリ四方の細かなみじん切りにしてそれをボウルに入れているあいだ、ヤンはテーブルの半分に小麦粉をあけて真っ白な山をこしらえ、頂を指で均して泉をつくり、そこへ卵の黄身と賽の目に切ったバターを落として丹念に練りはじめた。途中で私が刻んだニンジンを八割方ぶちまけ、グラニュー糖を北アフリカのミントティーみたいに中空からひと息に、そんなに入れて大丈夫かと心配になるくらい大量に入れて軽く練り、器用に延ばしたやや厚めの生地を、底の抜けるパイ皿に貼り付けるように盛った。そして表面に残りのニンジンとふたたび砂糖を散らして、あらかじめ温めておいたオーブンに入れた。
熊の敷石

思うにこれは、キャロット・ケーキというよりキャロット・パイかもしれない。でもユリイカ川上弘美特集号に載ってた川上×堀江の「ぶらぶら対談」によると『いつか王子駅で』にでてくる食べ物はみんな想像上の産物らしいので、このキャロット・ケーキもやはりそうなのかなあ。今度作ってみたい。