陸橋からの眺め

陸橋の上で撮りました

一日中降り続くのかと思っていた雨が、10時ぐらいにはすこんとあがった。そうしたらすごくいい天気になった。雨だったら年賀状でも書こうかな、と思っていたけど、なんとなく家にいるのがもったいなくなり本を持って散歩にでる。

忘年会の合間に読みついでいた中村昌義『陸橋からの眺め』(河出書房新社)、読了。二十歳を少し過ぎたぐらいの青年が女性のことや父母のことでいつもウダウダしている話。九州での生活と東京に出てきてからの全三篇がおさめられていて、表題作である「陸橋からの眺め」が鬱陶しさのなかにも乾いた感じがあって一番良かった。ラストでちょうどこんな描写も。

青い空にひと筋の雲が流れ、脆く形を変えようとしていた。まだ濡れている歩道には落ち葉が散り敷き、日曜の午前らしく人が出始めていた。街に漂っている晩秋の気配は明るく、物の影はひたすら鮮やかに見えた。(p240)

この人、今は忘れられているような感じだけど、みすず書房の「大人の本棚」は無理としても、講談社文芸文庫あたりに入ったら意外と売れるんじゃないか、と思った。